「染の小道2013」開催記録:のれん作家、金城盛弘さん編

今年の「染の小道」で目立ったのが、沖縄からの紅型染め作家さんたちの参加です。
縁あって那覇市の金城紅型染工房の方々が、東京・落合、中井の「染の小道」に多数ご参加くださいました。
こちらが金城盛弘さんです。
当日、「染の小道」を見に来てくださいました!
自身ののれん「裂(きれ)取り模様」が掛かるツツイデンキの前でパチリ。

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今回はこちらののれんの制作工程について取材しました。
本場、沖縄の紅型です!
紅型といえば、沖縄独特の濃く鮮やかな色使いですが、こちらは青一色。
地色を沖縄の藍、琉球藍で染めており、濃いところは顔料を使っています。
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「沖縄の染め物といえば、本土では華やかなものが好まれるので、正直藍一色で染めたものはあまり売れないんです。でも、私の祖母などはよく琉球藍の着物を着ていました」と金城さん。
「日本の藍と言えば、ほとんどが徳島で取れるタデ科の藍を使いますが、琉球藍はヤンバル(沖縄北部)で取れるキツネのマゴ科で、色めが少し黒っぽいのです。沖縄の粋を表現したいと思い、琉球藍を立てて、染めました」。
沖縄への愛がいっぱい詰まった藍染です!!!

まず、白生地の上に型紙を置き、固定し、駒べらを使って型糊を置きます。
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この青い糊が置かれた部分が後で地色が入る部分になるわけですが、まずは白く残るように糊伏せしておくわけです。

糊伏せされていない部分に青い顔料で色挿しをしていきます。
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その上からぼかしを入れて、柄に立体感を出します。
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つけ筆で濃い色を要所要所にのせ、ぼかし筆で素早くぼかします。

その後、100℃の蒸気で40~50分蒸して、顔料を生地に定着させます。
さらに約30分ほど水に漬けて、型糊をふやかします。
ふやけてきたら、高圧シャワーで洗い落します。
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糊で伏せていた部分が白く出てきます。

生地をしっかり乾燥させたら、最後まで色を入れたくないところ、地色を重ねたくない箇所をねば糊で伏せていきます。
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筒状の袋の細い口からねば糊を絞り出し、丁寧に糊伏せします。

糊のべたつきを抑えるため、ねば糊の上に引き粉(おがくず)をまぶします。
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そして、ねば糊がしっかり乾いたら、地入れです。
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琉球藍で引染め。
手早く、むらのないように刷毛で染めていきます。

再び色を定着すべく、蒸して、水中でねば糊をふやかし、高圧シャワーで糊を落とします。
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沖縄の日光で乾かして、完成!
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梅や竹、菊、牡丹、紅葉など、四季の植物がランダムに、しかし美しく配置されています。

こうして出来上がったのれんが東京の中井・落合で掛かった様子について「感動しました」と金城さん。

のれんを眺めていたら、ツツイデンキのご主人登場。
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「大好評ののれんです」とご主人。
「うちに掛かっているのれんが一番だと思ってますよ!」と嬉しそうです。
「じっくり見ていかれる方が多いです」と教えてくださりました。

初参加となった「染の小道」の感想を尋ねると「地域の皆さんで取り組んで、これだけのイベントができるということに感心しました」と金城さん。
「また、江戸小紋など、沖縄では滅多に見られない染めの技法もじっくり見ることができ、勉強になりました」。
「何より一番は、人との交流ですね。こうして様々な人と出会い、また、いろんな着物姿の人も見ることができて、本当に勉強になりました。そして、もっと紅型の素晴らしさもアピールしたいと思いました」と意欲満々。
「85枚ののれんを全部カメラに収める」と2日間、隅々まで「染の小道」を堪能してくださいました。

遠方からの参加を実行委員会一同、とても喜ばしく思い、歓迎の気持ちでいっぱいです!
沖縄の粋と技が詰まった紅型藍染のれんの素晴らしさとともに、南国の熱い心意気もいただきました。

こうして様々な土地の染め職人さんが集まってくださると、より刺激的なイベントになりますね。

今年の「染の小道」を席巻した沖縄勢の活躍、まだまだ続きます!