中井の街に現れた“リトル・ヤンゴン”

1990年代、中井駅周辺に“リトル・ヤンゴン、または“リトル・ビルマ”などと呼ばれる、ミャンマー人コミュニティが存在した。妙正寺川沿いには、レストランや食材店など、何軒かのミャンマー関連の店が立ち並び、彼らの文化はこの町に溶けこんでいた。

彼らが中井に集うこととなったのは、ミャンマー人僧侶が営む寺院(ポンジーチャウン)の存在があったからだ。寺院とは言っても、妙正寺川沿いのアパートの2階に設置された、こじんまりとしたものであったという。敬虔な仏教徒であるミャンマー人たちは、心の拠り所とも言える僧侶を訪ねるために、この中井に集まることとなったというのが真相のようだ。

しかし、いつしか寺院やレストランなどが高田馬場周辺に移ることとなり、それと共に中井の“リトル・ヤンゴン”も東へ2駅ほど移動することとなる。10年ほどしか存在しなかった幻のリトル・ヤンゴン。中井の興味深い歴史のひとつとして、今でも静かに語られている。

中井のブッダ2
写真:妙正寺川沿いの寺院に安置された仏像。台座を入れると高さは約2m、重量も230kgという見事なものであった(提供:日本ミャンマー交流協会)