お店さんへの納品を控え、のれん作りもいよいよ仕上げの段階に入っています。
仕上げといえば、湯のし。
というわけで、吉澤湯のし加工所さんにお邪魔してきました!
湯のしとは、染め上げられ、糊などを水洗いして縮んだり、シワができたりした反物を、蒸気を使ってまっすぐに伸ばし、幅を一定に揃え、絹織物特有の艶や照りを出す作業です。
吉澤敏さんは戦前から続く湯のし屋さんの3代目。
近隣の染色工房の方から信頼され、その多くを受注しています。
まず、湯のし機にかけるために専用の布にミシンで反物を縫い付けます。
さらにミシンで反物をつなげ、多いときは50反を一気に湯のし機にかけることもあるそうです。
湯のし機の手前側には細かく針のついた輪がふたつあり、そこに反物の両端を掛けます。この幅を調整して、蒸気をあて、生地を伸ばし、その後、金属の板とフェルトに挟んでプレス。この工程を2度繰り返します。一度スイッチを入れたら、途中では止められません。
反物によって生地の性質も異なるため、逐次調整が必要です。
職人さんたちによる様々な工程を経て、最後の仕上げですから、責任は重大です。
勢いよく蒸気を出す湯のし機は37年前から使われているもの。
「練習すれば誰でもできますよ」と吉澤さんは言いますが、力加減や幅の定め方などに経験と技が出ます。
ちなみに反物として布を芯に巻くのがこちらのマシーン!
あっという間に巻き上がります。
反物をのれんとして縫うのは奥様の仕事です。
渡された図面通りの寸法に仕立てて、出来上がり!
縫われるのを待っているこちらの江戸小紋は、よく見ると錐(きり)粒で文字が描かれています!読めますか?
そして、完成したのれんたちがこちら!
一足お先にちょっとだけ紹介しちゃいます!
ピンクの桜の花びらが舞い散る中に、鮮やかな鳥たちが描かれている春の訪れを告げるようなのれんは、鈴木庸子さんの作品。「ECHO」さんのところに掛かります。
家紋を大きく散らしたのれんは中村友思サンによるもので、クラシックなモチーフながら、明るいブルーで爽やかです!「ALICE ESTATE」さんの玄関を飾ります。
吉澤さんは、染織に携わる90人余りが所属し、「染の小道」を共催する新宿区染色協議会から実行委員会に参加する主要メンバーです。
職人さんたちとイベントの橋渡し的な役割を果たし、のぼりを提供してくれたり、のれん作家さんたちを取りまとめてくれたりと、陰で支えてくれる心強い存在です。「中井・落合が染色の街として盛り上がるように一般の方たちがボランティアで本当に一生懸命取り組んでくれて、本当に感謝しています。イベントが成功するように、できる限りのことをしていきたいです」。
「着物を着たいと思う人がいても、着ていく場所がないというのが現状です。それでは着物産業が伸びることはないですよね。中井を着物姿でいっぱいにするのが、僕の夢です」。
着物好きな皆さん、18日から3日間、ぜひ着物を着て、中井にお越しください!(by取材班)